1.子どもの連れ去りとは
ここでいう子どもの連れ去りとは、子の両親のどちらかが相手の合意なく、子どもを連れて勝手に別居してしまうことを指します。これは、法律上の定義があるわけではなりません。
子どもの連れ去りが最も多いのは、離婚前の別居に際して、一方の親が子どもと一緒に別居を開始するケースです。しかし、離婚前は、連れ去った相手方配偶者(同居親)も親権者であるため、なかなか警察等が介入することはありません。ただし、連れ去りの態様、経緯などから、未成年者誘拐罪等などの刑事責任を問われる可能性はあります。
2.子どもの連れ去りへの対応方法
子どもを取り戻すためには、「子の監護者の指定」及び「子の引き渡し」の調停または審判を家庭裁判所に申し立てる方法があります。そして、同時に、「審判前の保全処分」として仮処分を申し立てることになります(なお、保全処分は、権利の保全のため、その権利の確定または実現までの間、裁判所から命じられる暫定的処分です)。
子の監護者指定は、離婚が成立していずれかの親が親権者として決まるまでの間、一時的な監護者として指定してもらうための手続です。なお、子の監護者に指定された方の親が、離婚後の親権者となることが多いのが実態です。
そして、これらの手続きについてはスピード勝負です。監護者・親権者の指定においては、「これまでの監護状況」と「監護の継続性」が重要な要素となるところ、お子様が相手方配偶者に連れられて家を出てしまった状態が継続すればするほどそれが既成事実となり、不利になるからです。
3.申立て後の手続き
(1)1回目の期日
子の監護者指定の審判の申立てが受理された後、家庭裁判所から、第1回目の期日を知らせる通知が双方に届きます。そして、期日においては、家庭裁判所で裁判官からの審問を受けます。審問とは、具体的には、裁判官が双方に対し、これまでや現在のお子様の監護状況等の事情を聴取します。弁護士が代理人となった場合、この審尋に同席することが可能となります。
(2)家庭裁判所調査官による調査
多くの場合、家庭裁判所調査官による調査が行われます。双方の親との面談や家庭訪問、保育園・学校への訪問やヒヤリング等の調査がなされます。ここでは、いまま
での監護状況のみならず、現在の経済状況、双方の周りに子育てをサポートしてくれる人(両親等)がいるかの調査、そのようなサポートをしてくれる人がいる場合はその者の調査、双方の家の間取りの調査などが行われ、その後、調査官は、調査内容について担当裁判官宛てに監護者としてどちらが適切かについて報告書を作成します。多くの場合、裁判官は、この報告書の内容を尊重して判断をしますので、この報告書は非常に重要な意味を持ちます。したがって、このような調査に立ち会った経験のある弁護士のサポートがあれば、調査官による調査への事前準備・対策が可能となります。
(3)第2回期日~審判通常調査
報告の後に第2回審判期日が指定されます。この期日では、調査報告書の結果を踏まえて、裁判官から和解の提案がなされることも多いです。しかし、和解がなされない場合は、裁判官は審理終結日を決め、審理終結後、概ね1か月~2か月後に審判が言い渡されることになります。