お金の交渉

1.はじめに

お金に関する交渉は、大きく分けると、①財産分与、②慰謝料、③婚姻費用・養育費に分かれます。

2.財産分与について

(1)財産分与とは

離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。財産分与は,①夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配、②離婚後の生活保障、③離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており、特に①が基本であると考えられています。

(2)財産分与の対象

夫婦のいずれか一方の名義になっている財産であっても,実際には夫婦の協力によって形成されたもの(共有財産)であれば,財産分与の対象となります。一方、結婚前から有していた財産や親の相続が発生して得た相続財産は特有財産として、財産分与の対象とはなりません。例えば、婚姻中に夫の収入で土地建物を購入して夫の単独名義になっている場合であっても、妻が家事等を分担して夫を支えていたときは、その土地建物は,実質的には夫婦の財産といえると考えられます。

そして、財産分与については、対象となる財産の「範囲」やその「評価」も大きなポイントになります。この点からも、財産分与に精通している弁護士によるサポートが重要となります。たとえば、将来の退職金も財産分与の退職金となりえますし、経営者であれば自社の株式も財産分与の対象となりえます。

(3)財産分与の割合の原則と例外

裁判実務では、収入のない専業主婦であっても、共有財産は2分の1の割合で分けるのが原則です。その財産を作り上げるために妻も、専業主婦として貢献したと認められるからです。

しかし、高額所得者の場合、過去の裁判例において、高額な収入の基礎である特殊な才能が結婚前の個人的努力によることを理由に必ずしも財産分与を2分の1とはしない例外的な事例もあります。たとえば、大阪高裁平成26年3月13日判決は、夫が医師で医療法人を経営していた事案について、医療法人の持分を純資産価額約2億円の7割とした上で、財産分与の割合について夫6割・妻4割としました。高額所得者の離婚の場合、こういった例外的なことも想定されますので、財産分与に精通している弁護士によるサポートが重要となります。

また、仮に高額所得者とまではいえなくても、財産分与については、対象となる財産の「範囲」や財産の「評価」も大きなポイントになります。この点からも、財産分与に精通している弁護士によるサポートが重要となります。

3.慰謝料について

離婚に関する慰謝料については、それを払わなければいけないような事由があったとしても、法律上、具体的金額を定めた条項はありません。たしかに、裁判実務においては「相場」というものはありますが、これは個別・具体的な事情に大きく左右されますので、たとえ非があっても金額については毅然と交渉すべきです。したがって、慰謝料の実務に精通している弁護士の知識と「交渉力」によって大きく結果が変わる可能性があります。

4.婚姻費用・養育費について

婚姻費用や養育費については、「養育費・婚姻費用算定表」(東京家庭裁判所HPに掲載されています。以下「算定表」といいます。)が裁判実務では重視されます。しかし、個別の事情によっては、必ずしもこの算定表の通りになるとは限りません。また、算定表の数字は、「4万~6万」といった幅が設けられていますが、これは、そのような個別の事情を勘案するためでもあります。たとえ1万円の差であっても、10年で120万円の差になります。

一方で、仮に当事者同士の協議で、算定表による相場よりも高い金額で合意してしまった場合、これを算定表の水準に減額することも容易ではありません。お子様が可愛い、早く離婚をしたい余りに高い金額で合意してしまうと取り返しがつきません。

加えて、算定表では、収入の上限が給与所得者では2000万円,自営業者では1409万円までとなっています。しかし、それ以上の収入を得ている高額所得者である場合、上記算定表では解決できないことになります。このような場合は、離婚問題に精通していて「交渉力」のある弁護士のサポートの有無によって、養育費・婚姻費用の金額が大きく変わる可能性があります。

お問い合わせ
ご相談・ご質問、お気軽にお問い合わせください。
お電話でのお問い合わせ
0224-66-4132
0224-66-4132
平日9時~21時,土曜9時~17時
メールでのお問い合わせ
お問い合わせフォーム