お子様に関する交渉

1.はじめに

お子様に関する交渉は、大きく分けると、①親権、②面会交流、③養育費・婚姻費用に分かれます。

2.親権について

(1)親権とは

親権は、「身上監護権」と「財産管理権」の二つの権利に分かれます。
「身上監護権」とは、子の世話や教育をする親の権利義務のことを指します。したがって、子は監護者と同居することになります。一方で、「財産管理権」とは、子ども名義の財産を管理し、法律行為が必要な際には子どもの代理人となる権利義務です。
離婚をする場合、親権者とは別に監護者を定めることができますが、親権者とは異なり、監護者を定めることは任意であり、実務上は定めないことが多く、この場合、親権者が監護を行うことになります。

(2)男性が親権者となる割合

夫婦間の合意ができない場合は、調停や裁判等で親権者を定めることになります。男性にとっては厳しいですが、令和2年の統計によれば、親権者は母親側がなるケースが圧倒的に多く、男性側が親権者となる割合は約9%です(令和2年司法統計:家事第23表)。

(3)男性は諦めるべきか

母親が有利なのは否定できない現実です。しかし、上記のとおり、男性が親権者となっている場合は約9%もあるわけですから、可能性がゼロなわけではありません。裁判所が親権者について定める場合、後記の判断要素と家庭裁判所調査官による調査が極めて大きな意味を持ちます。個別の事情によっては、男性側が親権者となることも有り得ますから、早急にご相談ください(仮にお子様と別居している場合は、時間が経てば経つほど不利になります)。
親権争いとなった場合、裁判実務では多くの場合、家庭裁判所調査官による調査が行われます。双方の親との面談や家庭訪問、保育園・学校への訪問やヒヤリング等の調査がなされます。ここでは、いままでの監護状況のみならず、現在の経済状況、双方の周りに子育てをサポートしてくれる人(両親等)がいるかの調査、そのようなサポートをしてくれる人がいる場合はその者の調査、双方の家の間取りの調査などが行われ、その後、調査官は、調査内容について担当裁判官宛てに監護者としてどちらが適切かについて報告書を作成します。多くの場合、裁判官は、この報告書の内容を尊重して判断をしますので、この報告書は非常に重要な意味を持ちます。したがって、このような調査に立ち会った経験のある弁護士のサポートがあれば、調査官による調査への事前準備・対策が可能となります。

また、仮に可能性が薄くても、僅かな可能性に掛けるというのも選択肢の一つです。結果的に親権者とはならなかった場合でも、ご自身が後悔しないために徹底的に闘うことは、その後の人生にとって大きな意味があります。また、お子様が成長し、お子様がご結婚をするような年齢になったときに、「自分は、最後まで親権者になろうとした。」とお子様に伝えることもできるという意味もあります。

(4)親権(監護権)の判断要素

法律上、親権者を定めるための具体的な判断要素は決まっていません。しかし、実務上、以下のような点が考慮されています。

  1. 監護の継続性~主たる監護者はどちらか+監護の状況の現状維持
  2. 祖父母等のサポート~お子様が小さい場合に考慮されます
  3. 母性の優先~母親とは限りません
  4. 子の意思の尊重~10歳前後になるとお子様の意思も確認します
  5. 兄弟不分離~兄弟は原則一緒に
  6. 面会交流の許容~面会交流の拒絶は、原則マイナスの評価となります
    ※特に重視されるのは①で、また不貞行為はほとんどの場合、影響ありません。
    ※①が重視されるので、別居した場合は迅速な対応が最重要です。

3.面会交流について

(1)面会交流の重要性

離婚によって親子の絆を途切らせない、そして、大切なお子様の心のダメージを最小限にするためには、面会交流の継続的な実施が重要です。また、養育費と面会交流は理論的には関係ありませんが、面会交流が実施されない場合の方が養育費未払いになる傾向があることは否定できませんので、面会交流の継続的な実施は、貧困の防止にとっても重要です。

(2)面会交流の頻度

調停実務では、月1回くらいの面会交流が「相場である」ともいわれることがあります。しかし、令和2年の統計によれば、調停成立又は調停に代わる審判事件のうち面会交流の取決め有りの件数11,288件のうち、面会交流の回数を週1回以上としたのが238件、月2回以上としたのが935件ありますので、「交渉力」が重要となります(令和2年司法統計:家事第24表)。

4.養育費・婚姻費用について

婚姻費用や養育費については、「養育費・婚姻費用算定表」(東京家庭裁判所HPに掲載されています。以下「算定表」といいます。)が裁判実務では重視されます。しかし、個別の事情によっては、必ずしもこの算定表の通りになるとは限りません。また、算定表の数字は、「4万~6万」といった幅が設けられていますが、これは、そのような個別の事情を勘案するためでもあります。たとえ1万円の差であっても、10年で120万円の差になります。

一方で、仮に当事者同士の協議で、算定表による相場よりも高い金額で合意してしまった場合、これを算定表の水準に減額することも容易ではありません。お子様が可愛い、早く離婚をしたい余りに高い金額で合意してしまうと取り返しがつきません。

加えて、算定表では、収入の上限が給与所得者では2000万円,自営業者では1409万円までとなっています。しかし、それ以上の収入を得ている高額所得者である場合、上記算定表では解決できないことになります。このような場合は、離婚問題に精通していて「交渉力」のある弁護士のサポートの有無によって、養育費・婚姻費用の金額が大きく変わる可能性があります。

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